プロローグ #00

 

 唇を噛み締める。
 澄んだ夏の空に消えていく煙を睨む。
 それこそ、世界が揺れてしまっていても。それだけは零さないように。
 今頃、彼らは自分を探しているだろう。
 多額のお金が欲しいが為に、世間体の為に自分を引き取るといったあの人たちは。


 大丈夫。
 大丈夫だよ。


 誰かに告げるのではなく、自分に刻み付ける。


 だって。


 澄み切った空の蒼さが眩しくて、優しく吹く風が切なくて。

 


 ―――だって。

 


 こみ上げてくる思いを耐えるかのようにまぶたを閉じる。

 


 ―――もう、失くすものなんてないのだから。

 

 頬を伝った雫が地面に静かに落ちた。

 

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